
更新のご案内、何をどう書く?そのまま使える通知書の型と文例
満了日の3か月前。台帳のアラートが鳴って、更新案内を作りはじめる。
去年の別物件のファイルを開いて、名前と日付を書き換えて、あれ、この物件は更新料あったっけ、保証会社の更新料も一緒に案内するんだっけ、火災保険は……。書き換えるたびに、どこかを消し忘れていないか不安になる。心当たりのある方は多いと思います。
更新案内が毎回しんどいのは、文章力の問題ではありません。「何を入れるか」が毎回ゼロから始まっているからです。逆に言えば、入れる項目さえ固定してしまえば、あとは埋めるだけの作業になります。
結論:更新のご案内は、①必ず入れる7項目を固定する → ②「更新料あり/なし」「条件変更あり」「定期借家の再契約」の3つの型を用意しておく → ③送る前に契約書と3点だけ突き合わせる、この形にすると毎回の迷いがなくなります。いちばん効くのは①で、7項目のひな形をWordで1枚作れば今日から使えます。文章の上手さより、返送期限と連絡先が抜けていないことのほうが、実務では何倍も効きます。
進める順番は、こうなります。
- 更新のご案内に必ず入れる7項目を決める
- 契約の型ごとに、ひな形を3つ用意する
- 送る前に、契約書と3点だけ突き合わせる
何が起きているか
更新案内が毎回ゼロからになってしまうのには、理由があります。
ひとつめは、物件ごとに条件がばらばらなこと。 更新料がある物件とない物件、保証会社の更新料が別で発生する物件、火災保険を自社で取りまとめている物件とそうでない物件。同じ「更新のご案内」でも、中身は物件ごとに違います。だから使い回しが効かず、毎回どこかを直すことになります。
ふたつめは、案内文が「お知らせ」と「お願い」の両方を兼ねていること。 更新のご案内は、満了日をお知らせする書面であると同時に、書類の返送と入金をお願いする書面でもあります。この2つが混ざると、文章が長くなり、肝心の「いつまでに何をすればいいか」が埋もれます。入居者から「結局どうすればいいんですか」と電話が来るのは、たいていお願いの部分がお知らせに埋もれているときです。
みっつめは、書き方の正解が法令に書かれていないこと。 借主側から更新したい場合の案内文には、決まった書式も、法定の提出期限もありません。契約書の定めと社内の慣習で運用しているのが実情です。「これで合っているのかな」という不安が消えないのは、担当者の勉強不足ではなく、そもそも公式のひな形がないからです。
ここは、あまり気負わなくて大丈夫なところです。案内文の完成度が入居者との関係を決めるわけではありません。期限と金額と連絡先がはっきり書いてあれば、その書面はもう役目を果たしています。
① 必ず入れる7項目
まず、これだけ入っていれば成立する、という7項目です。逆に言えば、これ以外は足さなくていいということでもあります。
- 現在の契約の満了日(年月日で。「今月末」などと書かない)
- 更新後の契約期間(開始日と終了日。2年なら満了日の翌日から2年後の応当日の前日まで)
- 更新後の賃料・共益費など(変更がなければ「変更ありません」とはっきり書く)
- 更新にかかる費用の内訳と合計(更新料・更新事務手数料・保証会社の更新料・火災保険料を、それぞれ分けて書く)
- 返送期限と入金期限(日付で。「お早めに」は期限ではありません)
- 返送していただくもの(署名捺印した更新契約書◯部、保険証券の写し、など数と種類で)
- 問い合わせ先(担当者名・電話番号・受付時間)

この7つのうち、現場でいちばん抜けやすいのが4と5です。
4の「内訳を分ける」は、あとで効いてきます。更新料と保証会社の更新料をまとめて「更新費用◯円」と書くと、「何にいくら払ったのか」が入居者にも自分にも分からなくなります。半年後に問い合わせが来たとき、内訳が書いてある控えが1枚あるかどうかで、調べる時間が変わります。
5の「日付で書く」は、催促の手間に直結します。「お早めにご返送ください」で送ってしまうと、返ってこなくても催促の根拠がありません。期限が書いてあれば、期限の翌日から「まだ届いていないようです」と連絡できます。角を立てずに催促するための下ごしらえは、案内を出す時点で終わらせておけます。返ってこないときの進め方は更新書類が返ってこない…期限を管理して催促する段取りメモに整理しています。
ついでに、入れなくていいものも決めておくと迷いが減ります。更新料の根拠を長々と説明する、法律の条文を引用する、更新しない場合の不利益を強調する——このあたりは、通知書には要りません。説明が必要になったら、そのとき電話で話せば足ります。
② 型を3つ用意しておく
7項目が決まったら、契約の型ごとにひな形を分けます。3つあれば、たいていの物件をカバーできます。
A型:更新料あり・条件変更なし(いちばん多い) B型:更新料なし・条件変更なし C型:定期借家の再契約
そして、家賃改定を伴う場合はA型・B型の変形として扱います。これは通知書に一行足すだけで済む話ではないので、後述します。
以下、そのまま使える形で置いておきます。日付・金額・物件名を入れ替えれば、明日から使えます。
A型:更新料あり・条件変更なしのご案内
賃貸借契約更新のご案内
◯◯マンション ◯◯号室
◯◯ ◯◯ 様
平素より当物件をご利用いただき、ありがとうございます。
このたび、ご契約の期間満了が近づきましたので、更新のご案内を差し上げます。
■ 現在のご契約
契約期間 20◯◯年◯月◯日 〜 20◯◯年◯月◯日
賃料 ◯◯,◯◯◯円
共益費 ◯,◯◯◯円
■ 更新後のご契約
契約期間 20◯◯年◯月◯日 〜 20◯◯年◯月◯日(2年間)
賃料 ◯◯,◯◯◯円(変更ありません)
共益費 ◯,◯◯◯円(変更ありません)
※上記以外の契約条件にも変更はございません。
■ 更新にかかる費用
更新料 ◯◯,◯◯◯円(賃料1か月分)
更新事務手数料 ◯,◯◯◯円
保証会社更新料 ◯,◯◯◯円
火災保険料(2年分) ◯,◯◯◯円
―――――――――――――――
合計 ◯◯,◯◯◯円
■ ご返送いただくもの(20◯◯年◯月◯日 必着)
□ 更新契約書 2部(2部ともご署名・ご捺印のうえご返送ください。
1部は当社控え、1部は締結後にお返しいたします)
□ 火災保険の申込書 1部
■ お振込みについて(20◯◯年◯月◯日 まで)
◯◯銀行 ◯◯支店 普通 ◯◯◯◯◯◯◯
口座名義 ◯◯◯◯
※振込手数料はご負担をお願いしております。
ご不明な点や、ご入金の時期についてご相談がありましたら、
下記までお気軽にご連絡ください。
引き続き、安心してお住まいいただけるよう努めてまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
20◯◯年◯月◯日
◯◯不動産株式会社 管理部 担当:◯◯
TEL ◯◯-◯◯◯◯-◯◯◯◯(平日9:00〜18:00)
この文面で意識しているのは、次の3つです。
- 「変更ありません」を明記する。 空欄や省略にすると、入居者は「書いていない=変わったのかも」と受け取ります。変わらないことも情報です。
- 費用を1行ずつ分ける。 合計だけでなく内訳を出す。金額の根拠を聞かれたときの答えが、この1枚に入っています。
- 「ご相談がありましたら」を入れておく。 一括で払うのが難しい方が、黙って期限を過ぎるのではなく、電話をくれる余地を残します。これは回収の実務としても効きます。
B型:更新料なし・条件変更なしのご案内
更新料がない物件は、A型の「更新にかかる費用」の欄をこう置き換えます。
■ 更新にかかる費用
更新料 ございません
更新事務手数料 ございません
保証会社更新料 ◯,◯◯◯円
火災保険料(2年分) ◯,◯◯◯円
―――――――――――――――
合計 ◯,◯◯◯円
ここでも、「ございません」と書いてしまうのがコツです。欄ごと消すと、「うちは更新料を取られるのか取られないのか」が伝わりません。書いていないことは、伝わっていないこととして扱うと安全です。
なお、更新料がゼロでも保証会社の更新料や火災保険料は発生することがよくあります。「更新料なし」と口頭で伝えたあとに請求書が届くと、行き違いのもとになります。費用が1円でも発生するなら、その内訳を必ず1枚に載せる。ここは省かないところです。
更新料の有無そのものが分からないときは、更新料はいくら?有無と金額を、契約書と地域慣習から確かめる手順から確認してみてください。
C型:定期借家の再契約のご案内
定期借家は、更新ではなく再契約です。ここは文言を変えるだけでは足りず、手続きそのものが別ものなので注意します。
- 「更新」「更新料」という言葉を使わない。「期間満了」「再契約」「再契約料」に統一します。
- 再契約は、貸主・借主の双方が合意して新しく契約を結び直すもの。当然に続くものではない、という前提を丁寧に書きます。
- 契約期間が1年以上の定期借家では、期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により契約が終了する旨を通知することが借地借家法38条で求められています。この終了通知と、再契約のご案内は別の書面として扱うほうが安全です。
案内文の書き出しは、こう変えます。
定期建物賃貸借契約 再契約のご案内
(前略)
このたび、20◯◯年◯月◯日をもちまして、現在のご契約は期間満了により終了いたします。
つきましては、引き続きお住まいをご希望の場合、
あらためて定期建物賃貸借契約を締結(再契約)させていただきたく、ご案内申し上げます。
■ 現在のご契約 20◯◯年◯月◯日 〜 20◯◯年◯月◯日(期間満了により終了)
■ 再契約のご提案 20◯◯年◯月◯日 〜 20◯◯年◯月◯日(2年間)
■ 再契約にかかる費用
再契約料 ◯◯,◯◯◯円
(以下、A型と同じ)
再契約では、締結の際にあらためて「更新がない契約である」旨の事前説明と書面(電磁的方法を含む)の交付が必要になります。ここを飛ばすと、定期借家として成立しない可能性があります。段取りは定期借家の再契約、普通借家との違いと段取りにまとめてありますので、C型を使うときは先に一度目を通しておくと安心です。
家賃改定を伴うときは、通知書に混ぜない
賃料を変えたい場合、A型の金額欄を書き換えて送る、という進め方はおすすめしません。
賃料の変更は、更新のお知らせではなくお願い(協議)です。同じ紙の中に「更新のご案内」と一緒に入れると、入居者からは「決定事項の通知」に見えます。そこから話がこじれると、更新そのものが止まります。
順番としては、先に賃料改定のご相談を単独で出し、合意できてから更新のご案内を出す。この二段構えのほうが、結果的に早く着地します。改定をお願いする側の書面の整え方は家賃改定をお願いする前に|伝える順番と書面の整え方に分けてあります。
なお、貸主側から更新を断りたい場合は、さらに慎重な手順が要ります。普通借家では、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしたうえで、正当事由が必要とされています(借地借家法26条・28条)。案内文の書き換えで進められる話ではないので、貸主都合の更新拒絶と正当事由、慎重に進めるための基本を先に確認してください。
③ 送る前に、契約書と突き合わせる3点
ひな形ができると、次に起きやすいのは前の物件の数字が残ったまま送ってしまうことです。防ぐには、送信ボタンの前に3点だけ見ます。
1点め:満了日。 契約書の「契約期間」の欄を、案内文と指で突き合わせます。台帳の日付ではなく、契約書の日付を見ること。台帳に入力ミスがあると、案内文もそのまま間違います。
2点め:更新料の額と算定根拠。 「賃料1か月分」と書いてある物件で、賃料が過去に改定されているなら、改定後の賃料で計算します。前回の更新時の金額をそのまま持ってくると、ここがずれます。
3点め:更新後の期間の終わり。 2年更新なら、満了日の翌日から起算して2年後の応当日の前日が終了日です。たとえば満了日が2026年10月31日なら、更新後は2026年11月1日から2028年10月31日まで。「2028年11月1日まで」と書いてしまう一日ずれが、意外とよく起きます。
この3点は、契約更新の前に、契約者と同居人の現状を確認するチェックシートと一緒に回すと、ひととおり片づきます。
送る手段についても、ひとつだけ。 更新案内は、できれば発送日と宛先が残る形で送ります。普通郵便でも、発送台帳に「◯月◯日発送」と1行残しておけば十分です。「送ったはずなのに届いていない」となったとき、この1行が助けになります。同時に、その物件の入居者の連絡先が最新かもこの機会に確認できます。案内が宛先不明で戻ってきたら、それは滞納より前に気づける貴重なサインです。
具体例:同じ更新でも、書面が変わる
- Aさん:普通借家・2年・更新料1か月分。賃料も条件も変更なし。
- Bさん:普通借家・2年・更新料なし。ただし保証会社の更新料が1万円かかる。
- Cさん:定期借家・2年。オーナーは引き続き貸す意向。
Aさんは、A型そのままです。 迷うところはありません。更新契約書2部と火災保険の申込書を同封し、返送期限と振込期限を日付で書く。ここで悩む時間をゼロにするのが、ひな形を作る目的です。
Bさんは、B型です。 気をつけたいのは「更新料はかかりません」とだけ伝えてしまうこと。保証会社の更新料1万円が抜けると、請求の段階で「聞いていない」になります。ゼロの欄も、金額の欄も、両方書く。
Cさんは、C型です。 そもそも「更新のご案内」という件名で送ってはいけません。期間満了の通知が済んでいるかを先に確認し、そのうえで再契約のご案内を出します。ここは、書面の順番そのものが手続きの一部です。
3件とも「更新の時期が来た」だけの話ですが、送る紙はまったく違います。この違いを毎回その場で考えなくて済むようにするのが、②のひな形です。
影響
更新案内の型を決めておくと、じわじわ効いてきます。
返送率が上がる。 期限が日付で書かれ、返すものが数で書かれていると、入居者は迷いません。「何を返せばいいのか分からないから、あとで読もう」で放置される件数が減ります。催促の電話が減るということは、あなたの時間が返ってくるということです。
問い合わせの中身が変わる。 内訳が書いてあると、「これは何の費用ですか」という電話が減り、代わりに「支払いを分けられますか」という相談が来るようになります。後者は、話が前に進む電話です。
あとから調べる時間が短くなる。 送った案内の控えが1枚残っていれば、半年後の問い合わせにも、退去時の精算にも使えます。書面は、未来の自分への申し送りでもあります。
逆に、型がないまま毎回書いていると、忙しい月ほど文面が雑になり、雑になった月ほど問い合わせが増えます。この悪循環は、能力の問題ではなく、仕組みがないだけの話です。
明日やること
全部そろえなくて大丈夫です。次のどれかひとつで十分です。
- 7項目のひな形を1枚だけ作る。 A型(更新料あり・条件変更なし)から作ります。いちばん枚数が多い型なので、いちばん早く元が取れます。
- 直近に送った更新案内を1通、7項目と照らしてみる。 抜けている項目が見つかったら、それが次のひな形に足す欄です。
- 「更新にかかる費用」の欄を、内訳の行に分ける。 合計1行になっているなら、ここを直すだけで問い合わせが減ります。
- 返送期限と入金期限を、日付に書き換える。 「お早めに」を消すだけの作業ですが、催促のしやすさが変わります。
- 定期借家の物件を一覧で洗い出す。 C型を使う物件がどれかを先に分けておけば、うっかり「更新のご案内」で送る事故が防げます。
チェックリスト
① 記載項目
- 現在の契約の満了日を、年月日で書いているか
- 更新後の契約期間を、開始日と終了日の両方で書いているか
- 賃料・共益費に変更がない場合も「変更ありません」と明記しているか
- 更新料・事務手数料・保証会社更新料・火災保険料を、行を分けて書いているか
- 費用がゼロの項目も「ございません」と書いているか
- 返送期限・入金期限を、日付で書いているか
- 返送してもらうものを、種類と部数で書いているか
- 担当者名・電話番号・受付時間を書いているか
- 相談したいときの連絡先が、読み手に分かる位置にあるか
② 契約の型
- 普通借家か定期借家かを、契約書で確認したか
- 定期借家に「更新」「更新料」の語を使っていないか
- 定期借家で、期間満了の通知と再契約の案内を別の書面にしているか
- 家賃改定を、更新のご案内と同じ紙に混ぜていないか
- 貸主都合で更新しない場合の手順を、案内文とは別に確認しているか
③ 送る前の突き合わせ
- 満了日を、台帳ではなく契約書で確認したか
- 更新料を、改定後の賃料で計算し直したか
- 更新後の終了日が、一日ずれていないか
- 前の物件の名前・金額が残っていないか
- 発送日と宛先を、台帳か控えに1行残したか
- 宛先(入居者の送付先)が最新か確認したか
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最後に
更新のご案内は、送っても感謝されることの少ない書面です。返ってくるのは書類と入金だけで、「分かりやすかったです」と言われることは、まずありません。
でも、あの1枚を受け取った入居者は、あと2年ここに住み続けられることを知ります。引っ越しの心配をしなくていい、という確認を受け取っている。派手ではないけれど、人の暮らしの続きを支えている書面です。
今日は、A型のひな形を1枚だけ作っておきませんか。項目は7つで足ります。次に台帳のアラートが鳴ったとき、あなたは白紙からではなく、埋めるところが決まっている紙から始められます。
毎回ゼロから書かなくていいように、少しずつ形にしていきましょう。