クレーム電話を切った直後、受話器の横でメモ用紙に対応内容を書き留める賃貸管理担当者

クレーム対応履歴の残し方、後で活きる記録テンプレの作り方

「あのクレーム、いつ・誰から・何を言われたんだっけ」。 少し前の対応を思い出そうとして、記憶があいまいで手が止まった経験、ありませんか。

クレームの電話は、たいてい忙しいときにかかってきます。相手の勢いに押されながらメモを取り、なんとか一次対応を終えて受話器を置く。ほっとしたのも束の間、次の仕事が待っていて、そのまま記録は頭の中だけに残る——。そして数日後、同じ入居者から「この前の件、どうなった」と連絡が来たとき、あるいはオーナーに経緯を聞かれたとき、記憶をたぐり寄せながら答えることになります。感謝されにくいうえに、記録がないと自分の対応まで疑われかねない。これは、なかなかしんどい状況ですよね。

結論:後で自分を助けてくれるクレーム記録は、凝った書式ではなく「決まった型に、その場で最低限を埋める」だけで十分です。①受けた日時と相手、②何を言われたか(事実)、③その場で答えたこと、④次にやること(誰がいつ)——この4つを電話を切る前後の数分で残す。今日は、この型を一枚用意するところから始めましょう。

いきなり完璧な記録を目指さなくて大丈夫です。まずは次の3つを押さえれば、記録はぐっと後で使える形になります。

  1. 電話を切る直前に「日時・相手・要点」だけは必ずメモする
  2. 「言われた事実」と「自分の見立て・感想」を分けて書く
  3. 「次に誰が・いつ・何をするか」を一行だけ決めて残す

この3つがそろっていれば、その記録は数日後のあなたを助けてくれます。

何が起きているか

クレーム対応で記録が残らないのには、理由があります。責任感がないからではありません。むしろ逆で、目の前の相手をなだめ、解決策を考えることに集中しているからこそ、記録は後回しになるのです。

けれど、記録がないと困る場面は必ずやってきます。ひとつは継続対応のとき。同じ案件で二度目・三度目の連絡が来たとき、前回どこまで話したかが分からないと、入居者に同じ説明を繰り返させてしまい、それ自体が新たな不満になります。もうひとつは引き継ぎや報告のとき。オーナーへの報告、同僚への引き継ぎ、担当交代のときに、記録がなければ経緯はゼロから説明し直しになります。

そしてもう一つ見落としやすいのが、自分を守るという役割です。「言った・言わない」で食い違ったとき、対応した日時と内容の記録があるだけで、話は落ち着いて事実の確認に戻せます。記録は、相手を追い詰める道具ではなく、お互いの認識をそろえて冷静に進めるための土台です。

記録の型を、小さく分けて

日時・事実・対応・次アクションの四項目でクレーム記録を残す流れ図

一度に全部をきれいに書こうとせず、埋める場所を4つに絞ります。

まず、受けた日時と相手を先に書く。「◯月◯日 △時ごろ/◯◯号室の□□様/電話(相手からの入電)」。ここはクレームの中身を思い出す前に、機械的に埋められる部分です。日時と連絡手段(電話・来訪・メール)まで残しておくと、後で経緯を並べるときに時系列がぶれません。感情が高ぶった対応ほど、この一番地味な部分が抜けがちなので、最初に押さえるのがコツです。

次に、言われた「事実」と自分の「見立て」を分けて書く。ここが記録の質を大きく左右します。「上階の足音がうるさい、と苦情」——これは相手が言った事実です。一方「たぶん神経質な方だと思う」——これは自分の見立てで、事実とは別物です。この二つを混ぜて書くと、後で読み返したときに何が確認済みで何が推測か分からなくなります。事実は事実として、見立ては「(メモ:〜という印象)」のように区別して残す。そうすれば、担当が変わっても誤解が伝わりにくくなります。

そして、その場で答えたことと、次のアクションを一行で残す。「現地を確認して折り返す、と回答」「明日午前中に上階へ状況確認の連絡(担当:自分)」。誰が・いつ・何をするかを一行だけでも書いておくと、対応の宙ぶらりんが減ります。約束した折り返しを忘れて信頼を失う——これはクレームがこじれる典型的な入口なので、次の一手だけは必ず言葉にして残しておきたいところです。

この記録が、後でどう効くか

この4項目を埋めるのにかかるのは、慣れれば数分です。その数分が、後の何十分もの困りごとを減らしてくれます。

継続の連絡が来ても、記録を開けば「前回はここまで」がすぐ分かる。オーナーに聞かれても、時系列で経緯を答えられる。担当を代わってもらうときも、記録を渡せば引き継ぎが一枚で済む。そして万一「言った・言わない」になっても、日時と内容の記録があれば、感情論ではなく事実の確認に話を戻せます。

大切なのは、記録を「立派な文書」にしようとしないことです。清書は要りません。走り書きでも、4項目がそろっていれば十分に役目を果たします。まずは残す。整えるのは、必要になったときで間に合います。

明日やること

今日いきなり過去の全案件を記録し直す必要はありません。次の入電から、どれかひとつを試してみましょう。

このうちひとつ続けるだけで、「あの件どうだっけ」が「記録を見れば分かる」に変わっていきます。

そのまま使える記録テンプレ

コピーして、メモ帳やスプレッドシート、対応履歴の欄に貼って使ってください。空欄を上から埋めるだけです。

■クレーム・問い合わせ 対応記録
受付日時:    年  月  日   時  分ごろ
連絡手段:  電話(入電/架電)・来訪・メール・その他(     )
相手:  号室          様 / 連絡先(         )
────────────────────
言われたこと(事実):


(メモ:自分の見立て・気づいた点)


その場で回答したこと:


次にやること:  誰が(     )/ いつ(     )/ 何を(          )
対応者:           記録日時:  月  日  時

チェックリスト

「全部完璧に」ではなく、最低限の4項目から始めて、余裕があれば足していきます。

最低限これだけは(切る前に)

余裕があれば足したい

なお、記録には入居者の氏名・連絡先などの個人情報が含まれます。共有する範囲や保管の方法は、勤務先のルールに沿って扱ってください。トラブルが法的な段階に進みそうなときは、記録を証拠として整える前に、オーナー(貸主)や専門家に相談したうえで進めると安心です。

よければ、こちらも

騒音など具体的なクレームの一次対応は騒音クレームが入ったときの、最初の受け止め方と動き方に、両者の言い分を整理する聞き取りは上下階の生活音、両者の言い分を整理する聞き取りメモの作り方にまとめています。あわせて読むと、受けてから記録するまでの流れがつながります。

整理された対応記録を手に、落ち着いた表情で次の対応に向かう賃貸管理担当者

最後に

クレーム対応は、その場をしのぐだけで精一杯になりがちで、記録まで手が回らないのが当たり前です。それでも、電話を切る前のほんの数分で4項目を残せたなら、その一枚は数日後、数週間後のあなたを静かに助けてくれます。

今日は、次の一本の電話から「日時・相手・要点」の3つを書き留めるだけで十分です。感謝されにくい仕事ですが、その記録が、人の暮らしとあなた自身の両方を守っています。続きは、また一緒に整えていきましょう。